この分野(統合医療)の記事において、私がよく「実証医学」と書いているもののことについて、今回は書いてみたいと思います。実証医学というのは、もともとは英語でEvidence-based Medicine、直訳すれば「証拠に基づく医療」というもののことを指しています。
私も基本的にはこの実証医学に対して賛成なのですが、ツイッター等で話をしていると、一部私と違う理解をしてしている人が散見されたので、そこを明らかにしたいと思います。
私は、実証医学はつまるところデータの蓄積と、その活用だと理解しています。
たとえば今までの臨床例で、100人の患者のうち95人に効いた治療法がもしあれば、それはあなたに対しても効く確率が高いといえます。なので、医師が第一選択肢としてその治療法を患者に提案する、というのは実証医学的な医療といえるでしょう。
ですが、やや曲解をしている人が多々いるように感じました。つまり、たとえば100人の患者のうち5人にしか効かなかった治療法があった場合、そのような治療法はしてはいけない、もしくはその治療法に存在価値そのものがないと考ている人がいるようです。
実証医学的には(他に有効な治療選択肢がない場合)「100人中5人にしか効かない治療法ですが、試してみますか?」と患者に尋ねるのが本道かと考えます。
陳腐な例で恐縮ですが、よくドラマでこんなやり取りがありますよね。
患者の母:「息子の手術の成功率は?」
医師:「5%くらいです」
患者の母:「それでもほかに方法がないなら、それに掛けます・・・!」
実証医学が徹底されると、大変になるのは医師だけではありません。
患者も大変になります。
医師は、今までのように「これをすれば治る」とは決して言ってくれなくなるからです。
「この薬を飲み続けた場合の治癒例は78例中60例、その代わりこのような副作用が出ます、平均治療期間は半年から一年です。手術する方法もあります。手術で死亡した例はありませんが、その可能性はゼロではありません。治癒例は23件中21件です・・・」
といった説明を受けて、どの治療法を受けるかは患者自身が選択することになります。
実証医学は患者にとって良いことなのですが、自分自身を見直すといったことも必要になってきます。生活態度を改めることが必要になる場合もあるでしょう(ここで、メタボのことを思い浮かべる人もいるかもしれませんが、あのようなマクロ的・平均的な基準を個々人に無理やり当てはめるやり方は、インフォームド・コンセントと真逆に位置するものです)。
実証医学とは上記のようなものであると、私は考えています。