隠すほどの爪なら無い

自分自身の、この自我というものが消滅することへの覚悟はできた。苦しみからの開放・・・。だけど、だけどあと少しだけ、続きが見たい…!

【統合医療】恣意的な解釈で統合医療批判する人たち

先頃、厚労省のホームページで紹介された統合医療の資料を基に、統合医療を批判するのがちょっと流行しているようです。

NATROMの日記 個人の反応が異なることはランダム化比較試験が実施できない理由にはならない
まあ、議論が活発化するのは良いことなので基本的にはこういった意見も私は尊重したいとは思いますが、現在出てきている論調の問題点を今日は取り上げたいと思います。

上に引用したリンク先では、以下のように述べています。
「統合医療は個別化治療だからRCTに向かない」とは言えない。実際に、漢方でも鍼でもホメオパシーでもRCTはなされている。個別化治療をRCT免除の言い訳にする主張には警戒が必要だ。
まあ、端的に言うと統合医療側の資料「統合医療は個別化治療だからRCT(無作為対象化試験)に向かない」という記述に対して、「そんなこと言っておまえらだけRCT(という一種の試験)から逃げる気だろう?」というのが、記事の趣旨です。

この記事についたコメントにもこうあります。
統合医療には効果があるという前提から、その効果を確かめる試験を探しているだけじゃないですか?ズルイ。
試合で負けた後で、「このルールでは実力が判定できない」といって、ルールを変えようとしているようなもの。
初めに、効果の定義とその判定試験法を決めたら、あとで変えちゃダメですよね。
私にとってはこのコメントの方が記事本文よりむしろ印象的だったのですが、「医療」と「試合」を一緒にしちゃダメでしょう。医療は「勝ち負け」じゃないんですから。

医療は、あくまで患者のQoLを基準に考えないといけません。近代医療はそこから逸れて行っているという批判を受けているわけです。だからそういう本質的な部分への回帰が「統合医療」なのです。なので、今までの「効果があればよい」という考え方から見ると若干奇異な主張があってもおかしくないというか、むしろあってしかるべきであると思うわけです。

統合医療側の資料にしても、そういう文脈で「統合医療にはRCTはなじまないのではないか?」という問題の投げかけをしているわけで、それに対して「RCTから逃げたいだけなんじゃね?」と言った突っ込みをするのは、良く言って無粋、悪く言うと無思慮なんじゃないかと思うわけです。

まあ、普段から近代医学の思想を植え込まれて、それでRCTをベースに切磋琢磨している(と思っている)人たちにしてみれば「RCTから逃れようとするのはズルい」って思ってしまうのかもしれません。

私は最近、医療というのは料理ととても似ているのではないかと考え始めました。

両方とも「人間という個体」を相手にしていること、QoLの向上を目指していること、たくさん共通点があります。
さて、「うまい料理屋」はRCTで見つかるんでしょうか?もちろん、まじめにやればそこそこうまいものは見つかるでしょう。しかし、自分自身で開拓した「隠れた名店」で料理を食べたとき、そのうまさには勝るものがないのではないでしょうか?

そういう風に考えると、どんな医療も「患者の感覚」が大変重要です。そのためには「医療過程」に対する考察というものが必須になってきます。料理で言えばいいタイミングで料理をサーブしたり、お酒をつぎにきてくれたり。全く同じ料理でも味というか満足度に大変な影響を与えます。

実は、以前も書きましたが漢方も成分そのものに加え、処方過程、飲み方などが本来厳密に決まっています。これは過去の中国医が「医療過程」を重視していたことの現れでしょう。エキス製剤を水で流し込むだけで十分な効果を期待することは難しいのです。しかし、そのような誤った「医療過程」で行われた「治験」を元にRCTとかやられて訳の分からない統計処理をされて、「はい、効果なし」って言うような話が最近とても多いのです。

さて、標準医療では患者の待ち時間であるとか、看護師の注射の上手下手であるとか、そういったディテールは十分に管理されているんでしょうか?

病院に入るだけで気分が悪くなると言う人もいるのです。白衣高血圧症と言う病名をご存じでしょうか?

だから「RCTはヤダ」というよりは、「RCTにまつわる過度のモデル化(医療過程の省略)を忌避する」というのが統合医療側のスタンスなのだと私は思います。数を増やそうと思えば、当然個々の「医療行為」は簡略化されてしまいます。

こういうところまで考察しての統合医療批判なのでしょうか。そもそも、統合医療は近代西洋医学も含んだ概念です。お互いの融合が目的であり、対立が目的ではないのです。つまり、試合ではないわけです。

過渡期の現象なのだと思いたいのですが、「近代医療側」はそういったことも勉強していただければなと思います。