まー会計の基本なのでいちいち説明しないのを一概には責められないとは思うのですが(ちなみに私も会計学はど素人)、シャープが葛城工場を「減損処理」するとか言っているので「工場閉鎖ってことですか…!?」みたいにオロオロしている人もいるので、ちょこっと解説しようかなと思った次第です。
例によって専門家でないだいぶつの勝手な解釈ですので、突っ込みズバズバしていただいてもいいんですが。
工場とか生産設備には何らかの価値があると考えられます。
個人持ちのパソコンとかは別にかまわないのですが、会社組織においてある一定以上の価値があるものは税務署(または市役所)に申請しておかないといけないと言うことになります。それが、税率に影響するためです。
だから、工場や生産設備には「値段」がついています。「残存価額」とか「簿価」と言います。
これは税率の算定基準になりますので、高ければ高いほど税金もたくさんふんだくられます。
では安く申告すりゃーいいじゃんとなりますけど、そうは問屋がおろしません。税務署から突っ込まれたら最後、税務署が勝手に見積もった金額で税率を算出され、しかも不足分の税金は重加算税(倍以上)になりかねません。
泣きついたら不足分だけで許してくれるかもですが・・・(その辺は大企業の納税実務をやった事無いので知らん)。
だから基本的には簿価は高く見積もってると思います(税務リスク回避)。
で、この「簿価」と言うのは原則として年々減っていきます。車と同じで、毎年同じ価値と言うのはありません。
例外的に、電話加入権とか金地金とかは減却しないように思います(減りませんので)。
ちょっと前にNTTが電話加入権をタダにすると言ったので、電話加入権を資産計上していた一部の企業が「減損処理」をした、と言うのは記憶に新しいです(私だけ?)。
もうちょっと遡ればバブルのころの「不良債権」ってやつです。ちょっと性質は違いますが、1億円しか価値の無いビルに100億円貸していて、会社がつぶれた。この場合99億円は減損処理する必要があります。
シャープの葛城工場は何十年も前から建っているわけですので、実は簿価的に見るとほぼタダとみて間違いありません(土地の価値のみ)。生産設備も同様です。
10年乗った車は中古で売ろうとしても値段がつきません。それと同じです。
それでも今までは資産計上して地方税を納めてきたわけですが、そういう余裕がなくなったと言うことを意味すると言うことです。税務署もさすがに文句を言えません。
もちろん、減損処理をすればバランスシートの「資産の部」が減りますので、企業価値に影響を与えかねます。これが信用収縮の引き金になることもありますが、実際問題として資本金1000万円とかの株式会社がたくさんあるわけです。オフィスが持ちビルなんてごく一部の企業で、たいていはテナントです。
今時、持ちビルじゃないと会社としてダメとか言う考え方の方が古いのです。実際、シャープは田辺の本社を引き払って阿倍野のタワービルに引っ越す予定をしていました(経営環境の悪化で実行できなくなりそうですが)。
なので、減損処理自体はごく自然(むしろ、もっと早くしていてもよかったくらい)で、驚くようなことではないのです。
自社ビル・自社工場で働くと言う事は、いわば札束でダンボールハウスを建てているようなものです。バブル期にはそれが成立しましたが、今の日本ではもはや成立しなくなってきています。
安定税源を確保したい政府は嫌がるでしょうけど、そういう流れです。
オフィスや工場などリースで十分なのです。その方が、柔軟に規模の増減に対処できます。
シャープの東京オフィス(浜松町)は既に清水建設のビル「シーバンス浜松町」に移っています。
ゼネコンの自社ビルだからまだ許されたのかもしれませんが・・・。
減損処理は時代の流れであり、やらねばならない、やらざるを得ないことです。
日本国内でほとんど生産を行っていないのですから、液晶工場だけ分社化したうえで上流工程のみを再編して持ち株会社にするくらいの勢いでやっていかないと、シャープ(のブランド)はもたないでしょう。