隠すほどの爪なら無い

自分自身の、この自我というものが消滅することへの覚悟はできた。苦しみからの開放・・・。だけど、だけどあと少しだけ、続きが見たい…!

【NHK】受信契約の有無と解約すべきか否か

私はNHK受信料を一度たりとも払ったことがありません。なので、本来は受信料を一度でも払ってしまったケースは体験したことがないので、書く資格がありません。私がこのブログに書いていることは、あくまで「主観的事実」であることはこれまでも繰り返し書いてきたとおりです。

ただ、あまりにもその手の問い合わせが多いので、今までに聞いた話を総合して、このケースについて書いてみようと思います。

一言で言うと、NHK受信料を1度でも払った場合と、1度も払っていない場合では、天と地ほどの差があります。それは、NHK受信料は1度でも払うと受信契約を締結したとみなされるからです。

いろいろと法的構成は考えられると思うのですが、主に民法125条「追認」にあたるという判断が示されています。

民法 第125条
前条の規定により追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。
一  全部又は一部の履行
二  履行の請求
三  更改
四  担保の供与
五  取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡
六  強制執行

「受信料を一度でも払う」ことは、一に書いてある「全部または一部の履行」にあたると考えられます。逆に言うと、受信契約を締結しても受信料を一度も払っていなければ、取り消すことが可能と言うことです。だからNHKの集金人は「契約をしてくれ」じゃなくて「受信料を払え」と言ってくるわけです。

また、夫名義で妻が契約した、と言うケースの契約の成立も一時期ネットでよく取り沙汰されていたのですが、現時点における裁判所の判断の主たるものは「配偶者が勝手に払った場合でも受信契約は有効に成立している」と言うものです。

まず第一に、このケースでは本当に妻が対応したと言うことを立証する必要が出てきます。領収書には夫の名前が書いてあるわけです。それを妻が書いたと言う事を立証しないといけません。たとえば筆跡鑑定などすればそれは可能かもしれません。しかし、妻が書いたと言うことを立証できたからといって「ハイ契約無効!」とはなりません。

民法 第761条 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

夫婦は互いの勝手に行った「法律行為」に対して、相互に責任を負います。ただし、「日常家事」に限ります。

たとえば300万円の外車を買う契約なら「日常家事」にはあたらず(大抵の場合)無権代理となります。しかし、NHK受信料程度の金額なら妻が勝手に契約しても差し支えがない(=日常家事)と考えられるわけです。これを覆さない限り契約は有効となります。

この「日常家事にあたるか否か」が以前はよく取り沙汰されていたのですが、最近の裁判例でNHK受信契約が「日常家事にあたる」という判断が下されたこともあり、すっかりそのような議論もなりを潜めています。

また、相手に対して「私は知りませんからね!」とちゃんと主張していればこれも対象外となります。たとえば領収書に「夫の承諾を得ていませんので夫が異議を唱えた場合この契約は無効です」などと書き足すなどしておけばいいと言うことになります。でも、そこまでする人が受信料を払ったりはしないでしょう。

次に、NHK受信料の集金人(地域スタッフ)がしつこいので(身に危険を感じ)やむを得ず、と言う主張もよく伺います。心情的にはよく分かるのですが、法的にはまったくもって擁護の余地がないのが現実です。

まずは立証が非常に難しいです。ビデオに始終を録画しているようなケースでないと事実上立証は不可能と考えてよい(つまり裁判では認められない)でしょう。家族以外の目撃者がいると証人になってもらうことも可能ですので立証の可能性は高くなりますが、これも数年以上前ともなるとかなり厳しいでしょう。

もしこのような主張で法廷に持ち込んだ場合、犯罪的なまでにしつこいのであればなぜ警察を呼ばないのか、と言うことになってきます。もしくは、集金人が帰った後に警察に電話をした、でも構いません。怪我をしたのであれば病院に行って診断書をもらった、でも構いません。もしそれらの行為を全くしなかったのであれば、ではどうやって「集金人がしつこいのでやむを得ず」と言う風に裁判官に思ってもらえるか、なのですが、多分不可能でしょう。

もちろん、NHKの集金人がしつこくときに犯罪的でさえあると言う事は事実です。しかし、裁判官はそういう事は仮に知っていても知らない前提で判断をしないといけない職務なのです。

では逆に、一度もNHK受信料を払ったことのないだいぶつの場合はどうでしょうか?

まず、NHKが放送法64条に基づいてだいぶつにNHK受信契約の締結および、締結義務を持ちながら契約していなかった期間の受信料の支払い請求訴訟を起こしたとします。

まずここで大きく変わってくるのですが、契約がある場合「支払い督促」という、比較的訴える側に有利な手続きが使えるのですが、だいぶつとNHKの間には契約関係が存在しないので「通常裁判」を起こさざるを得ません。通常裁判は支払い督促より費用も手間もかかります。

そして「だいぶつが契約締結義務をもちながら契約していなかった期間」、つまりだいぶつが「受信機器を設置していた期間」と言うのはNHK側に立証義務が生じます。

一度でも受信料を払った(=契約した)人は、その時点で「受信機器を設置しています」と認めています。そして、受信規約上受信機器を撤去した際には「廃止届」を提出することになっています。それを提出していない以上、法的には契約してからずっと受信機器が設置されていたと判断されます。

だいぶつの場合逆です。受信契約を締結していない以上受信機器が設置されたかどうかは誰も知りません。設置しているかもしれないし、していないかもしれない。その立証責任はNHK側にあります。

どう考えても、だいぶつに対して裁判を起こすのは、一度でも受信料を払ってしまった善良な人に対して支払い督促を起こすより、4段も5段もハードルが高いので経済的合理性がありません。

なんだか、一度でも払った自分が1円も払ってないだいぶつごときにバカにされてるみたいで面白くないかもしれません。ですが、前も書いた通り「法は権利の上に眠る者を擁護しない」のです。そのために、私は10年以上も前に「NHKの受信料について」をしたためているのですから、これまで「知ろうともしなかった」人が多少割を食うのは仕方がないのです。

びた一文払わないのは社会的に悪いことであるとか、常識的におかしいとか、そういう事を書いている人はNHKの手先とでも思っておけばよいのです。なにをもって社会的に悪なのか?そんなことをいう人は、「今ドルが安いのでドルを買わないのはおかしい」とか言ってくるFXの業者の人と何ら変わりはないと、私は思います。

一度でも払ってしまった人は、一度でもたばこを吸ってしまった人のように、元に戻ることはできません。どうあがいても、だいぶつと同じにはなれません。

私はそのケースを体験したことがないのであまり無責任な事も言いたくないのですが、もしだいぶつに共感とかを感じるのであれば、まずは契約を辞めるところから始めてみてはどうでしょうか?

その際に、未払い受信料を払わされるかもしれませんが、それでNHKと縁が切れるなら安いものだと考えてはどうでしょうか?

それとも「いつ裁判を起こされるか」とビクビク暮らしていく生活を、いつまでも続けていたいのでしょうか。