隠すほどの爪なら無い

自分自身の、この自我というものが消滅することへの覚悟はできた。苦しみからの開放・・・。だけど、だけどあと少しだけ、続きが見たい…!

ゴーマニズム宣言と反「ゴーマニズム宣言」勢力について

小林よしのり氏著「ゴーマニズム宣言」シリーズが一斉を風靡しています(だから、ネタが古いって)。
別に同書を知らなかったわけでもないんですが、感化されやすい性質なのでなるべく近寄らないようにしていました。単行本の単価が1000円以上するというのもちょっと・・・。マンガに1000円以上出すのは、貧乏な私としては少し抵抗があったというのもあります。

しかし、この前図書館に行ったときに不覚にも読んでしまい、案の定ハマってしまいました。確かに面白い。いや、私の心性としてこういう書き口のものは、内容にかかわらず喜んでしまうというところがあります(小林氏の「東大一直線」「東大快進撃」は当時ジャンプを読んでいたので知っていましたが、なんか作者の卑屈な精神が表れているようであまり好きな漫画ではなかったのですが。ちなみに、「おぼっちゃまくん」は全然知りませんでした)。

ただ、基本的にどんなものでも「健全なる批判精神」を持って読むのを心情としている私としては、「ホントに書いていることは全部正しいのか?」という気持ちが完全にはぬぐえません。ということで、「反」ゴーマニズム勢力の意見も少し覗いてみることにしました。

結局は「従軍慰安婦問題はホントなのか?」「南京大虐殺はホントにあったのか?」というところに行き着くのですが(小林氏の「公・個・私」の理念については、主観的な問題もあると思うので割愛)、小林氏は「なかった(戦争犯罪としての略奪や強姦がなかったとは言っておらず、あくまで軍関与の、つまり日本国が責任を負うべきレベルでの問題がなかったという意味)」、反対勢力は「あった」、ということで、双方何らかの証拠を提出しております。こうなってしまうと私自身で調査してみないと私自身納得のできる事実は得られないのですが、はっきり行ってそこまでする気力も能力もありません。ということで、私自身としてはこの問題については結局「棚上げ」せざるを得ません。

しかしながら、心情的に私は、小林氏の主張を信じたいと思います。というのも、特に南京大虐殺については、私自身(ゴーマニズム宣言を読む前から)「日本軍にとって、そのようなことをしてなにかトクがあったんだろうか?」という疑念をずっと抱いてきたからです。ホントに民族浄化(ホロコースト)を目標としていたなら、満州国や朝鮮・台湾でも中国人の粛清が行われていたはずです。それを戦争後期になって、しかも南京に取り残されたたかだか(?)20~30万人を虐殺するなどというのはなんか変だなぁ?という気持ちがぬぐえなかったのです。従軍慰安婦問題についても同じことが言えます。「従軍慰安婦問題があった」派が主張することが事実なら、それが一般人にとっても十分理解可能な「理」にのっとってなされた、という説明がほしいところです。

いずれの問題に対しても、小林氏は、当時の日本軍や軍人の心情をシミュレーションした上で、日本軍にそのようなことをするメリットはなかった、という主張を展開します。これは非常に説得力があります。

対して、反「ゴーマニスト」は「南京大虐殺は歴史的事実として認められている」というようなことをくりかえすだけです。どのようにしてそのような自体にいたったのか、そのストーリーが認められる主張がないのです(よーく探せばあるのかもしれませんが・・・)。

これが、私が小林氏の主張を評価する根拠です。

あと、反「ゴーマニスト」が小林氏を「右翼」「極右」のように表現している点も気になります。なぜ、ことさら「右」や「左」にこだわるのでしょうか。まあ、確かに「ゴーマニズム宣言」の中では「左翼」「サヨク」という表現が多用されていますので、これに対する反発なのかなぁ?という気もしますが、これは少し卑怯な気がするのです。というのも、「右翼」「極右」といえば、右翼系暴力団や、大声でがなりたてる街宣車のイメージが湧いてきます。純粋に小林氏の批判をするのであれば、そのような表現は使わずに読んでるものを納得させる表現をとってほしいものです。某氏などは「ゴーマニズム宣言は、右翼作・小林よしのり画の著書である」などと書いていましたが、そのようなことはきっちり裏を取ってから書くべきではないかと思います。

と、小林氏を支持するようなことばかり書いてきましたが、一方の小林氏に全く問題がないかといえばそうでもないと思います。特に、某ホームページを読んで分かったことなのですが、有名な上杉氏の「脱ゴーマニズム宣言」裁判問題です。ゴーマニズム宣言には「小林よしのり完全勝訴」のようなことが書いてありましたが、実際の判決はそうではなく、「脱ゴーマニズム宣言」のたった1ページの問題を元に「脱ゴーマニズム宣言」の出版差し止めを求めるとともに、わずか20数万円の賠償金を上杉氏が小林氏に支払うこと以外、ほぼ上杉氏が適法とされていたのです。それを「小林よしのり完全勝訴」というのは少し苦しいでしょう。

他にも、ゴーマニズム宣言には雑な点が多く、その主張のすべてが正しいなどということは決していえないでしょう。ただ、私は別にかまわないと思うのです。というのも、

本というのは面白ければいい!

からです。面白ければウソ書いてもいいのか?という話もあるのですが、これも程度問題でしょう。問題の上杉氏の裁判結果に関しても、小林氏の精一杯の負け惜しみと思えば、カワイイものではないかと思うのです。それに、事実としてホントかウソかは置いておいて、その時点で小林氏がホントと思っていることを書いたのであれば問題ないと思うのです。小林氏も認めているように、小林氏は一漫画家に過ぎず、政治家でも知識人でもないのです。彼が彼の思ったことをどのような形で表現しようと、その表現にいちいちとらわれて反論していても、小林氏の思想の本質にはたどり着けないですよね(たどり着かせたくない人が妨害工作をしてるんでしょうが)。

結局、小林氏は、ちゃんとした立脚点を持たない日本人はが国際的に何も主張できないため、このままでは国力が低下する一方であることを憂えているだけだと思うのです。そして、まずは日本人に自信を持ってほしいのでしょう。そこで、過去の日本を必要以上に悪いものとして捉える「自虐史観」の蔓延する風潮をを少しでも改善したいのでしょう。それが、勢い少し(?)誇張した表現になったり、人によってはウソとしか思えない表現になっているのだと思うのです。

反「ゴーマニスト」の人に問います。あなたは、この国の将来を憂えていますか?

少なくとも、小林氏は憂えていると思います。そうでなければ、危険を冒してまであんな本を出版はしないんじゃないかと思うんですが・・・(これも、南京大虐殺の考察で述べた「心情シミュレーションによる検証」に基づきます)。

「脱ゴーマニズム宣言」を書いた上杉氏は、何かこの国の将来のためになることをしたんでしょうか?単に、ゴーマニズム宣言の傘を借りて印税を儲けただけではないですか・・・。