低周波音問題に悩まされて、解決方法を求め、行きついたのが日本唯一と言われる低周波音の権威である汐見文隆先生でした。
この方は、まさに「上医は国を医す」を体現されたお医者様であると言うことが、今回いろいろと調べて良く分かりました。
まず、低周波音は感じる人と感じない人の差が著名です。
日本の司法制度は前例主義・平均主義なので、まずこの部分がハードルになります。
法律技術の話になりますが、騒音問題などで争点になる「受忍限度(我慢できる限度)」、この言葉を出したら低周波音ではほぼ勝てません。
低周波音にはその性質上、受忍限度が存在しないからです。
また、このブログでも多く指摘してきたとおり、日本の行政も前例主義・平均主義に陥っており、しかるに医療関連者(厚労省に財布のひもを握られている)も同様の立場とならざるを得ません。
これが「難病」を産み出す温床となっております。
つまり「まれにしか起こらない」⇒「病気では無い」と言う態度が、随所に表れてくるのです。
私が以前指摘した「なぜ医者は正直に『異常を発見できませんでした』と言わないのか?」と同じ話です。
本来、人間個人を見つめ、その声にキッチリ耳を傾ければ、難病などと言うものは発生しえないのです。
これは、統合医療の姿勢にもつながるものです。
国家の利益を優先し個人の声を黙殺しようとする態度が、難病を発生せしめるのです。
低周波音の話で言うならば、被害者の声にキッチリ耳を傾け続ける態度こそが、この問題を解決に導くのです。
汐見文隆先生は、その半生の多くを、この「低周波音問題」という新しい公害の解決に導くために費やしてこられました。官僚や御用学者の妨害にもめげず、黙々と被害者のデータを取り続け提示し続けてきました。
その声をも無視して、今風力発電から発生する低周波音被害者が新たに生み出され続けてきています。
人間個人の声に真摯に耳を傾ける努力は、最終的には国家の利便性を損なうと言う理由で打ち捨てられてしまいます。範囲が拡大し、被害者が増えれば増えるほど、そういう傾向が高まります。水俣病や薬害エイズの例を出すまでもありません。
しかし「国家の利益」(≒公共の福祉?)を損なうと言っても一時的なものです。
火事と同じで、初期消火が一番大事なのです。今は問題が小さいから黙殺しておいても大丈夫だろうと言うのは、大局的に見れば誤った見方であり、結局長期的には国家の利益をも損なうのです。
それを知ってか知らずか。「逃げ切り世代」と言われる世代であれば、知っていて黙殺しているのでしょう。
したがって、経済的合理性のみから「国を医す」上医が産まれることはありません。
このような「上医」と、同じ時代に生きられたと言うことを幸運と思うほかはありません。