私は鉄道が好きです。その理由は、美しいからです。
美しいと言うのは、その造形が美しいと言う事ではありません。「ありよう」が美しいと表現したいのですが、ちょっと分かりにくいと思うので、ちょっと使い古された言葉で言うとシステムが美しいのです。
そして、美しいと言うのはバランスがとれていると言うことです。
私は寝台列車が好きですが、適度なスピード・適度なコスト・適度な居住性で目的地に到達できると言うそのコンセプトがバランスが取れており美しいと言う理由で好きになったようです。
オリエント急行のような超豪華夜行列車にもあこがれはしましたが、日本のブルートレインの方がやはり好きだったのはそう言ったあたりに理由がある気がしています。
新幹線も実はそうです。
運用当初、新幹線は営業運転速度(160km/h→210km/h)が世界最速でした。超高速鉄道と言えば新幹線ということが世界中に知れ渡り、今でも世界のどこに行っても「シンカンセン」で通じてしまうようになったくらいでした。
その後世界最高速度はフランスのTGVに抜かれてしまいましたが、新幹線の巻き返しはすぐには起きませんでした。スピードを上げようと思えばいくらでも上げられた新幹線だったのですが、安全性および輸送密度の面からスピードを上げなかったのです。
現在では東海道新幹線は表定速度200km/hを超える列車を他国の追随を許さない世界一の輸送密度で運航しており、これはおそらく世界中のどの国が真似しようと思っても真似ができない神業的な所業です。唯一まねできそうな国と言えば台湾くらいだったのですが、台湾に輸出された新幹線の輸送密度は東海道新幹線よりはるかに低いし、技術指導にもかなり苦労したそうです。おそらく、アメリカ人には運航することが不可能です。
単純な運搬機械ではない「システム」としての新幹線を輸出することは、そう簡単ではありません。
まあ、輸送密度が東海道新幹線の1/10くらいの「新幹線まがい」の鉄道であれば輸出することも可能だとは思います。しかし、私はこの「新幹線まがい」のモノにはまったく美しさも感動も覚えません。
フォルムとかサイズとかスピードではないのです。「ありよう」が大事なんです。「ありよう」が美しくないと、姿かたちなど関係ありません。私の言っている「ありよう」は、人間で言えば「たましい」のようなモノかもしれません。
九州新幹線や長崎新幹線は「新幹線まがい」ですね、正直。政治の力で美しい「ありよう」をゆがめられるのは見るに堪えません。関西圏民ですが、むしろ北陸新幹線の方が期待してしまいます。