発達障害の子どもたち (講談社現代新書) (2007/12/19) 杉山 登志郎 商品詳細を見る |
息子に発達の障害がある可能性がある、ということで読んだ本だったのですが、適当に選んだ割にはいい本でした。
今回の記事は書評ではないので、本の内容はまあ読んでいただくとして、ぶっちゃけていうとこの本の著者杉山登志郎医師は「幼児教育、特に5歳までの教育がとても重要である」ということをしつこいくらいに訴えておられます。
というのも脳神経は5歳までにほぼ完成してしまうからです。ここまでを脳発達の「フェーズ1」とすれば、5歳~10歳は「フェーズ2」に入ります。そして10歳~の「フェーズ3」に入るという流れです。
フェーズ1~フェーズ2の移行期に起こる適応障害がいわゆる「小1プロブレム」、そしてフェーズ2~フェーズ3の移行期に起こる適応障害がいわゆる「10歳の壁」なわけです。
小1プロブレムが起きる原因ははっきりしています。5歳までに幼児教育がきちんと行われていないからです。
私の住んでいる福岡では、市役所の児童課に幼稚園への入園相談に行くと、決まって「幼稚園は義務教育じゃないから…」と言われます。そりゃ確かに、法律には書いてありませんし、教育委員会などは(お金がないからと言って)市立幼稚園を廃止するとまで言っているくらいです。
幼児教育に対する認識が軽すぎるのです。
このため、杉山医師は口を酸っぱくして幼児教育関係者を鼓舞しておられますが、それでもまだまだこの国の幼児教育に対する体制は全くと言っていいほど無頓着です。一部で「こども園」が設立されるなど進歩も見られるが、もう一方で福岡市のように公立幼稚園を無下に廃止するなどということが行われるなど、全体としては後退しているくらいの現状です。
幼児教育と言っても難しいことではありません。子供が、子供らしく遊びまわれる環境を与えてやれば、それでよいのです。幼児教育には特別な教科書はありません。だから、保育園でも悪くはありません。
保育園は共働きでない家庭では預かってもらえません。共働きでも預かってもらえない子供を「待機児童」と言いますが、実際には共働きでも年収が少なかったり親が近くに住んでいると「待機児童リスト」に載せてもらえないので、福岡市が4月1日時点で「待機児童ゼロ」宣言をしたそうですが、
・4月になった瞬間に保育対象児童がガクンと減る(小学校に上がるため)
ので4月1日時点で待機児童ゼロなんて当たり前なのです。マイナスにならないといけないくらいです。これは、ソフトバンクホークスのマジック140くらい笑えないギャグで、エイプリルフールネタかと思ったくらいです。
もはや完全な数字遊びになってしまっています。その数字遊びの返す刀で、公立幼稚園を全廃しようというのです。
福岡の幼児教育は崩壊しているのです。それを素直に認めるところから始めるべきでしょう。ましてや、発達障害幼児に対するケアなど、多くを期待するほうが間違っていることとなります。
そして、多くの幼児が幼稚園に行かない「未就園児」のまま小学校に上がるのです。結果「小1プロブレム」が起きます。そう、コーラを飲んだらゲップが出るくらいに当たり前のことです。
児童精神科医が口を酸っぱくしなければ仕方なくなるわけです。
これが政治の問題でなくして何の問題でしょうか。ましてや、発達障害の児童をつかまえて病気のように扱うなど、人権問題ですらあります。
いい加減、老人の医療費などとっとと3割にして、幼児教育を何とかすべきです。