隠すほどの爪なら無い

自分自身の、この自我というものが消滅することへの覚悟はできた。苦しみからの開放・・・。だけど、だけどあと少しだけ、続きが見たい…!

九州新幹線は、残念な新幹線

例によっていまさらなんですが、以前全線開業間もない九州新幹線が、なんと6時間も停止し乗客が缶詰めになると言う事件がありました。
九州新幹線6時間停止 列車の電源喪失 13日午後4時ごろ、福岡県筑後市の九州新幹線下り久留米-筑後船小屋間の架線にビニール(縦3・1メートル、横2・1メートル)が引っ掛かっているのを、新大阪発鹿児島中央行き「さくら557号」(8両編成、乗客約280人)の運転士が発見、非常停止した。架線の送電も緊急停止され、列車は乗客を乗せたまま、現場に6時間余り立ち往生した。JR九州は復旧作業のため、一時、上下線で運行を見合わせた。

JR九州によると、ビニールを見つけた運転士はショートなどの事故を避けるために、架線から列車への送電を止める運転台の「保護スイッチ」を押し、列車を停止させた。列車の電源で非常灯などは点灯させた。

現場に駆け付けたJR九州の作業員が同日午後6時13分ごろ、ビニールを除去。しかし、停止時間が長引き、列車のバッテリーが既に上がっていたことから、パンタグラフが作動せず、自力走行が不可能になった。

このため、新鳥栖駅で待機中だった博多発鹿児島中央行き「さくら421号」が現場に向かい、同日午後10時7分、「さくら557号」と連結。約30分かけて筑後船小屋まで押し、乗客を運んだ。14日午前0時4分、乗客はさくら421号に乗り換え、鹿児島中央に向かった。

このトラブルで九州新幹線は上下線とも約6時間全面ストップした。JR九州によると、停止から約20分後、「上り線まで止める必要はない」と上り線への送電再開を決定。しかし、運転台からの保護スイッチの解除ができず、午後5時20分ごろ、運転士が車両の屋根にあがって装置を手動で解除した。

このトラブルでダイヤが乱れ、上下線とも停車駅から発車できない新幹線が続出。JR九州は一部在来線の発着区間を延ばして対応した。同社によると、筑後船小屋で下車した乗客の大部分は、「気分がすぐれない」と不調を訴えたという。

=2012/03/14付 西日本新聞朝刊=
九州新幹線(博多-鹿児島中央)は、いわくつきの新幹線です。

もともと、「スーパー特急」方式、つまり在来線と同じ軌間(1067mm)で新幹線の技術(スラブ軌道やロングレール)を取り入れ、高速走行(250km程度を想定)させると言う前提で進められていました。
これは、もともと線形の良かった博多-熊本間を活用しつつ、線形の悪い(カーブの多い)熊本-鹿児島中央間を新線建設することにより、トータルの時間短縮を図ったものです。

博多駅では、以前九州新幹線が新八代-鹿児島中央しかなかった時代に、新八代駅で行われていたような「新幹線と在来線のホーム乗り継ぎ」をすることにより、乗り換えロスはほとんどありません。したがって、直通しても時間短縮効果がほとんど見込めないのです。

唯一のメリットは標準軌(1435mm)ゆえスーパー特急方式よりは最高速度を上げられることですが、実は九州新幹線の新線部分はアップダウンが激しいため、最高速度で巡航できる区間は極めて限られており、総所要時間で行くと最高速度320kmの新幹線規格でも最高速度250kmのスーパー特急規格でも、数分程度の短縮しか見込めないのです。実は、車両が軽くて済む在来線規格の方が、加減速度や曲線通過速度を速くでき、加減速度や曲線通過速度が速ければ最高速度は低くても総所要時間は短縮できるのです。

それならコストの安い方式の方がいいと思うのですが、「やっぱり新幹線は標準軌じゃなきゃイヤ!」と誰かが言ったのでしょうねぇ。結局、途中から標準軌に変更となり、現在に至ります。

私であれば「日本初の在来線規格(1067mm)での250km営業運転」の方がすごい気がするのですが、微妙なブランド意識のたまものでしょう。技術に疎い人が多すぎる気がします。

輸送密度に関しては東海道新幹線とくらぶるべくもなく、JR東海が直通運転したくないのも当然だと思います。JR西日本はもともと山陽新幹線の輸送密度に余裕があるので「鳴り物」として直通運転をしているわけですが、総所要時間や費用を考えるとどう考えても飛行機に太刀打ちできるとは思えません。(新大阪-博多でも苦戦しているのに!)。

結局、ブランド志向+利益地元誘導という極めて古臭いスキームで意思決定が下され、出来た残念な新幹線だと私は思っており、冒頭の事故などはそういうことの現れのように感じてしまいます。

私は鉄道ファンではありますが、技術肌であるので、ブランド志向に寄った鉄道を素直に喜ぶことができません。「カシオペア」とかも乗りたいとは思いますが、果たして採算は取れているのかと言うと微妙だと思います。

むしろ、あくまで輸送密度と採算性にこだわるJR東海の方が、最近では好ましく感じてしまいます。
ブランディング戦略も重要だとは思うんですけどね・・・。微妙に外しているような気もしますしね・・・。