隠すほどの爪なら無い

自分自身の、この自我というものが消滅することへの覚悟はできた。苦しみからの開放・・・。だけど、だけどあと少しだけ、続きが見たい…!

【統合医療】「精神科養生のコツ」(書評)

この「統合医療」カテゴリでも何回か紹介していますが、この本の内容は大変有用だと思いますので、改めて紹介させていただきます。神田橋條治先生の「精神科養生のコツ 改訂」です。


神田橋先生は1984年からはじまり現在も、鹿児島市の伊敷病院にて精神科診療および臨床にあたっておられます。
私は神田橋先生の著書を読んだのはこの本が初めてだったのですが、先生の「コツ三部作」(追補 精神科診断面接のコツ / 精神療法面接のコツ / 精神科養生のコツ 改訂)は精神科の医師では読んでいない方が珍しいというような、バイブルとなっているようです。中でも、前2作は「治療者向け」に書かれた本であるのに対し、どちらかと言えば「精神科養生のコツ 改訂は患者向けに書かれた本と言うことです。

この本の中身を簡潔に言えばこうなります。

人それぞれ、体のクセは違う。同じことをしても良くなる人と良くならない人がある。永年の精神科臨床の経験で何か万人に共通する治療法のようなものを模索してきたけど、どうやらそういうものはないようだ。
一番良いのは、自分が気持ち良いことを探し出して、気持ちよいことをする癖をつけること。気持ち悪いことは、しなければならないときもあろうけど、治療が必要となるような人はできるだけ気持ち悪いことはせず気持ちいいことだけするのが良い。
この本の冒頭にこのようなことが書かれております。

ここで「気持ちいい」を「好き」と読み替えてしまう人がいるかもしれませんが、「気持ちがいい/悪い」と「好き/嫌い」は必ずしも一致するものではありません。好き・嫌いと言うのは後天的な学習の結果獲得するものなので、自分の心身に素直な人は気持ちがいいことを好きになる傾向がありますが、必ずしもそうとは限りません。

自分自身の心身が気持ちいいか気持ち悪いか、それは自分自身の心身が一番よく知っていますし感じられるはずです。が、現代人にはその能力が失われてしまいつつあります。たとえば、野生動物は毒キノコを食べて死んだりはあまりしないはずですが、現代人はたやすく毒キノコを食べて死んでしまいます。

「気持ちいい/悪い」が完璧に判断できる状態になると、毒キノコは口に入れる前に気持ち悪いと感じるはずです。正確には我々も感じているのですが、その「感じ方」があまりにも弱いか、他の記憶や知識に上書きされてしまって、関知できていないと言うことです。

まず何をすればよいかと言うと「自分の内側に注意を向ける」と言うことです。これは、自力整体の矢上先生もおっしゃっています。

もちろん、ただ内側に注意を向けるだけで内在する感覚に鋭敏になれるくらいなら、誰も禅や瞑想の修業をしたりはしません。一日に一時間でも、内側に注意を向ける努力をする必要があると思います(このために、私は「DVDで覚える自力整体」をお勧めしています)。現代人は、外側に注意を向けすぎなのです。だから、簡単なことで治るはずの症状で苦しんだりします(「永年病院で治らなかったのに、整体に行ったら一発で治ったよ!」というのはそういうタイプの人です)。

さらに、この本には「Oリングテスト」や「入江フィンガーテスト」、「舌トントン」と言った「気持ちいいか悪いか」の判定法が記されています。この辺をオカルティックだなと思う向きが多いようですが、「自分の心身のことは自分の心身が一番知っている」と言うのは私は真理だと思います。Oリングテストは親指と人差し指で作ったワッカを第2者に同じようなワッカを作ってもらい引っ張ってもらい、その強さで対象物(反対の手で持つ)の「気持ちよさ」を判定するものです。

今まで、そういう感覚を磨いてこなかった人にはにわかには信じられないだろうし、難しいとも思いますが、本来誰でもできることなのです。もちろん、他人のことを治せるようにまでなれとまでは言いません。自分自身の心身の状態さえ理解できるようになればよいのです。状態が悪い状態に行っているようなら、その時に可能な「気持ちよい」事をすればいいのです。

たまにあらわれる野口晴哉のような「ヒーラー」のごとき人は、「他人の心身が『気持ちよい』と感じることを、その本人より良く感知できるタイプの人」なのだと思います。

自分自身の状態を完璧に理解できるようになった人は、どうやら他人の状態も割とよく理解できるようになるようですが、私自身まだ自分自身を理解できるようにはなっていませんので、そこまではわかりません。また、野口晴哉の場合生まれつきそういう能力があったフシがあるので、修行でどうにかなるかは私も知りません。

そもそも、ゴールは自分自身が幸せに生きることなのですから、そこまで行く必要もないと思っています。つまりは、「自分自身が自分自身の心身のプロフェッショナルになればよい」と言うだけのことです。

ちなみに、神田橋先生はホメオパシーのことも否定的には書いていません。このことを持って「ホメオパシーを否定せんとは医師の風上にもおけん!」みたいなことを思っている人がいるように私は感じているのですが、それは誤解と言うものです。「レメディ」が気持ちいいか悪いか、判定して飲むか飲まないか決めればよいと、神田橋先生は言っているのですから。

また、ホメオパシーの応用ともいうべき「転写水療法」と言うものもこの本では紹介されています。これもホメオパシーと同じで「水の持つ雰囲気を転写する」という、人間の持つ限られた科学的知識では理解できない事が書かれています。これを見て眉をひそめる人もいるでしょうが、上と同じ話でやっぱり違うのです。この本には「神田橋先生が実際にやってみて(割合多くの人に)効果があったもの」しか書かれていないのです。だから、「効果があるはずはない」とする向きには猛省が必要と思います。

私は、この本を読んで上記のように考えるようになりました。書評になっているかどうか微妙ですが、一度読んでおいて損のない本ですので紹介させていただきました。