隠すほどの爪なら無い

自分自身の、この自我というものが消滅することへの覚悟はできた。苦しみからの開放・・・。だけど、だけどあと少しだけ、続きが見たい…!

板の一番薄い部分にたくさん穴を穿つ人たち

何かの本で読んだのですが、かのアインシュタインが量子力学の隆盛に対して、次の様な発言をしたそうです。

「私は、板を与えられたら、真っ先に薄い部分を探して、そこにできるだけたくさん穴を開けようとするようなヤカラは嫌いだ」(記憶を頼りに書いているので不正確かもしれん)

まあ、とても分かりにくいインテリな皮肉なのですけど、アインシュタインは量子力学は完全な理論ではないと思っていたのです。その一方で、量子力学はレーザーや半導体、原子力などの技術開発にとても寄与していました。しかし、たくさん実のなる木ばかり世話していたら、他の木は枯れてしまうかもしれません。

板にはまんべんなく穴を穿つべきであって、薄くて穴のあけやすい部分ばかりに穴をあけているとバランスがよくなくなると、そう言いたかったのでしょう。さすが、「神」によって統合されていた少しばかりバランスの悪い宇宙論を「相対性」というバランスにより再統合したアインシュタインの言葉と言うべきでしょう。

つまり、いい意味におけるバランス感覚をもった科学研究を行うべきであると、そうアインシュタインが思っていたと言う事だと私は思っています。

私は、見方によれば負け惜しみにも取れるこの発言がけっこう好きでしたが、でも引用するにはちょっとわかりにくいのであまり引用したことがありません(原典を読んだわけでもありませんし)。

最近、このブログにもコメントをつけておられるNATROM氏の言説は、まさにこの「板の一番薄い部分にたくさん穴を穿つ論法」と言っていいでしょう。

たとえば、最近のNATROM氏のブログ記事にこういうのがありました。

ローレンツと体罰
ローレンツと言えば、相対性理論好きには真っ先に「ローレンツ変換」とかが思い浮かぶと思うのですが、物理学者のヘンドリック・アントーン・ローレンツとは別人(性が同じなので血はつながっているのかも?)で動物行動学者のコンラート・ツァハリアス・ローレンツという方だそうです(Googleの順位から見るとこちらの方が有名なようです)。知らんかった。勉強になるわーNATROMの日記。

この記事だけを読むと、「体罰の会」とやらがコンラート・ローレンツの学説を引用して体罰を肯定しているのだと言う風に読めますが、おそらくNATROM氏の記事を読んだ方の1%もクリックしないだろうリンク先を私がクリックして読んでみたところ、ずいぶん文脈が異なります。

要は、「体罰の会」は教育には体罰が必要なんだと言うイデオロギーをもった団体なわけです。イデオロギーなんだからロジックもクソもないわけで、とにかく「体罰ありき」なんですね。むしろ「体罰なくして教育なし」みたいな感じですな。実は、かのNATROM氏でもこう堂々と主張されたら、異論を唱えることは難しいと思います。

というのも、私も自分の立場で言えば体罰を振るわれたくはないし、そのイデオロギーはどやねん!?とは思いますけど、イスラムでは自爆テロさえイデオロギーのもとで正当化されてしまうという現実から考えても、イデオロギーの否定は不可能、と言って誤解があるなら、自分がおかしいと思うイデオロギーを否定することは必ずしもいい結果を生むとは限らないんです(テロとの戦争など)。

そして「体罰の会」がこのイデオロギーを科学的に正当化しようという試みとしてコンラート・ローレンツの動物行動学を引用したところ、待ってましたとばかりにツッコミを入れたのがNATROM氏、という構図ですね。

まず「体罰の会」において「教育に体罰は不可欠」というのは単なるイデオロギーなんだから、科学的に正当化しようと言う態度がおかしい。イスラム教徒は豚肉を食べませんがそれは神(アラー)が不浄だから食っちゃいかんといったからであって、科学的に云々じゃないのと同じです。

でも、科学的に肯定できないなら社会的に抹殺しちゃうよという圧力が現代社会に派常に存在してます。まあ、既得権と言うのか神社やら八百万の神とかは暗黙裡に認められているけど、近代以降になって神社の真似ごとをしだすとシバかれる。この辺の構図は、ソープランドが売春をしても取り締まられないのに新たに売春をしだすと取り締まられると言うのに似てますね。

「科学的に肯定されなきゃ認められない」という圧力を常にかけておいて、さあ頑張って科学的(に見える)肯定を試してみたらフルボッコにする、まあそういういぶり出し作戦の様なものが常に展開されているわけですね。

なので、堂々とイスラムのように「神(アラー)が体罰をお認めになったのだ」と言えばよろしい。ロジカル派の誘導に乗っちゃダメ。ま、もともとがそういう伏線なんだと思いますけどね(もちろんこれは、NATROM氏が伏線を張ったのだろうという憶測記事ではありません)。